■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
がんばれ建設
~建設業専門の業績アップの秘策~
ハタ コンサルタント株式会社 降 籏 達 生
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■2025年10月31日
NO2458
◆「適正な工期設定」の新指針が公表
~現場管理の質を高めるガイドライン~
2025年7月、
中央官庁営繕担当課長連絡調整会議において
「公共建築工事における工期設定の基本的考え方」
が取りまとめられました。
この新しい指針は、
長時間労働の是正や週休2日の実現といった
働き方改革への対応を念頭に置きつつ、
発注者・設計者・施工者が一体となって
“無理のない施工体制”を確保することを
目的としています。
◆工期は「現場実態に基づく」ことが原則
本指針では、
以下のような視点が強調されています:
・自然条件や地域の実情を反映
・施工条件・資機材調達・行政手続の期間を加味
・設計段階での説明責任と協議の重要性
・工事着手前後の「準備期間」「後片付け期間」の明示
これまで「短ければ短いほど良い」と
されがちだった工期設定ですが、
今後は工程全体の適正化と
透明性の確保が求められます。
◆各フェーズでの留意点:技術者が知っておくべきこと
【設計段階】
・設計図書には施工条件を明記し、
後から齟齬が出ないようにする
・施工に影響を与える条件
(騒音制限日や立入制限など)を
入居官署と事前協議
・誤謬、不整合のない設計図面作成を徹底
【発注段階】
・工事繁忙期の回避、余裕期間の
設定による施工時期の平準化
・入居官署の移転計画や
行事日程を施工条件に反映
・債務負担行為などを活用し、
年度内完了ありきの無理な計画を回避
【施工段階】
・「ワンデーレスポンス(その日のうちに回答)」
「ウィークリースタンス
(時間外対応なしの業務環境)」の実現
・他工種(設備・外構・内装など)との
後工程調整の徹底
・書類提出の簡素化、
ICT活用による情報共有の効率化
◆「短縮提案は原則NG」~働き方改革との整合性
注目すべきは、
入札契約時に工期短縮に関する技術提案を
求めてはならないと明記されている点です。
これにより、無理な短納期提案による
過重労働の温床を事前に防ぐことが期待されます。
◆新築・改修で異なる考慮点にも注意
新築工事では、
・土質・地歴・地下水の調査による
根切・地業工期の精査
・養生期間、引越期間の確保
改修工事では、
・使用中施設での工事制限
(騒音・停電不可時間帯など)
・アスベスト除去、仮設設置、段階施工への対応
・狭小スペースでの作業効率低下を見込んだ工期設定
◆現場技術者としての視点:今後求められること
・「これぐらいでできます」という
“経験値の勘”だけでなく、客観的な根拠を
持って工程を設計・説明する力
・各フェーズの関係者との調整・説明・記録の精度
・「働き方改革の主役は自分たちだ」という意識
◆まとめ:これからの工期設定は「人を大切にする技術」
公共建築工事における新たな工期設定方針は、
単なる工期管理のテクニックではなく、
「人材確保と安全性の両立」
「持続可能な施工体制の確立」といった、
本質的な価値を問うものです。
私たち技術者一人ひとりが、
「適正な工期とは何か?」を考え、
現場と社会の橋渡し役としての
自覚を持つことが求められています。
※出典:「公共建築工事における工期設定の基本的考え方」
(令和7年7月 中央官庁営繕担当課長連絡調整会議・全国営繕主管課長会議)
https://www.mlit.go.jp/gobuild/content/001903059.pdf ←こちらをクリック
※工期変更や施工条件明示の詳細は、
営繕工事請負契約における
「設計変更ガイドライン(案)」等も参照
https://www.mlit.go.jp/gobuild/content/001347702.pdf ←こちらをクリック
*************************************************
【編集後記】
*************************************************
「以前に比べると顧客が工期設定に
配慮してくれるようになった」
と現場で働く方から聞くようになりました。
より働きやすい建設業界にしていきたいものです。
*************************************************
社長ブログ