建設業で本当にあった心温まる物語

井口建設(群馬県)・井口昭宏/女子高生からの手紙

2016-05-30 建設業の心温まる物語/日刊建設工業新聞掲載記事を引用

 あれは夕方担当の現場に戻る時のことでした。女子高校の前を通りかかると人だかりができていました。通りがかった私は、「何かありましたか?」と尋ねると、誰かが私に「女子高生が側溝の中に財布を落としてしまいまして…」と言いました。グレーチングや側溝蓋(ぶた)を動かすことは私の得意とする仕事です。現場用の車に乗っていた私は工具を取り出して側溝蓋とグレーチングを外し、流れている排水溝の中を見ました。覗(のぞ)きこんだ水路の中には残念ながら何もありませんでした。水路の水は思いのほか多く、私はずぶ濡れになり安全靴もぐちゃぐちゃになってしまいましたが、財布を見つけることができなかったことに未練を残しながら現場に戻りました。

 それから何日かたったある日、会社に学校の先生と名乗る方が訪ねてきて手紙を渡されました。女子高生からのお礼の手紙でした。

 「通りがかっただけなのに、ずぶ濡れになりながら、見ず知らずの私のために時間をさき、真剣に財布を探してくれありがとうございました」と書いてありました。私はその手紙を読んで、「普段使っている道具でこれだけ感謝されるとは」と、とても嬉(うれ)しく思いました。財布を見つけることができなかったことは残念に思いますが、これからも人のために役立つ建設業者でありたいと思った出来事でした。