建設業で本当にあった心温まる物語

オオサワ株式会社(滋賀県)・本田 真司/~3時の“一服”の楽しみ~

2016-06-27 建設業の心温まる物語/日刊建設工業新聞掲載記事を引用

 20歳で入社し、現場に配属された日から「監督」と呼ばれました。建築のことを何一つ分からない中で、上司に指示されたことは「ホーキを持って、現場を掃除してきて」でした。毎日毎日、物を片づけたり、掃除したり。これが「監督」の仕事だろうか、と悩み始めました。

10時と3時には“一服”と呼ばれる休憩時間があります。職人の親方に「監督、コーヒー買ってきて」とお札を渡され、買いに行くのです。いわゆる「使い走り」です。作業員全員のコーヒーをヘルメットに入れて運びました。「○○さんはブラック、○○さんは微糖・・・」いつしか名前と好みを覚えました。

一服しながら、職人さんに聞きました。「あそこはなんで○○してるん?」「そこってどうなるん?」作業中は答えてくれませんが、一服中は丁寧に教えてくれました。見た目は怖い顔をしていますが、話すと優しい人がほとんどで、見た目で人を判断することはなくなりました。現場がどんどん楽しくなりました。

あれから18年、いまは現場の所長として本当の「監督」になりました。いろんな話をしてきた中で、職人にとってやりやすい環境なども教えてもらいました。だから気持ちよく仕事をしてもらえる環境を提供したい、そのような思いで現場管理しています。育ててもらった職人さんに感謝していますし、尊敬もしています。建築の現場は1人では何もできません。たくさんの技術が結集して、初めて1つのモノをつくることができ、お客様に感謝され、社会の人たちの役に立ちます。

18年が経ち「監督」という職業に自信とほこりが持てるようになってきました。そのように思えるようにしてくれた職人さんに感謝でいっぱいです。