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がんばれ建設
~建設業専門の業績アップの秘策~
ハタ コンサルタント株式会社 降 籏 達 生
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■2025年12月5日
NO2471
◆「標準労務費」で現場はどう変わるのか
〜建設業法改正と新たな請負契約のカタチ〜
「今後、請負契約の金額に
“労務費の基準”が求められるようになる」
そんな説明を国土交通省が
全国で行っているのをご存じでしょうか。
2025年12月までに全面施行される
改正建設業法では、「標準労務費」という
新しいルールが導入されます。
これは、技能者の処遇改善を目的に、
あまりにも低い労務費での見積もりや、
契約後に労務費を削るような交渉を
禁止するというものです。
つまり、協力会社や職人にきちんとした
賃金が届く仕組みにしようという動きです。
元請けが契約金額の中に
適正な労務費を組み込み、
それが途中で削られずに最終的に
技能者に届くこれが国交省の狙いです。
説明会では「建設費の相場は上がるのか?」
という質問がありました。
国交省の担当者は「上がることが想定されるが、
正確な数字は出せない」としながらも、
「全て発注者が負担するのではなく、
賃料などに転嫁して、業界全体で支える
仕組みを目指す」と述べています。
現場の感覚からすると
「またコストアップか」と
不安になるかもしれません。
しかし、“適正な労務費の確保”は、
今後の人材確保に直結する問題です。
処遇改善がなければ若手は集まらず、
現場はさらに回らなくなってしまいます。
◆計算式は「労務単価 × 歩掛かり」
「標準労務費」は、
都道府県ごとの公共工事設計労務単価と
国交省直轄工事で使われている歩掛かりを
掛け合わせて、「1単位の作業にかかる労務費」
として算出されます。
これは“目安”ではありますが、
見積作成時や価格交渉の正当性を示す
武器にもなるでしょう。
ただし、これは一律適用ではなく、
現場条件に応じて補正が可能です。
生産性の高い企業であれば、
歩掛かりを抑えることで
競争力を保つことも可能です。
注意すべきは、単価を削って
価格を下げることはルール違反となる点です。
場合によっては「建設Gメン」の
指導対象にもなり得ます。
◆「総価一式」契約からの脱却へ
改正建設業法のもう一つの狙いは、
これまでのように総額だけを定める
「総価一式」契約から、内訳を積み上げて
総額を示す契約への転換です。
特に設計・施工一括の案件では、
「詳細設計の前に見積を出す」ケースが多く、
これが現場とのギャップを生み、結果的に
労務費が削られることもありました。
今後は、
「設計が明確になった段階で再見積もり」や
「労務費の内訳を明示する」ことが求められます。
透明性と交渉の余地を持つ見積が、
今後のスタンダードになっていくでしょう。
◆技能者の声が届く制度も始動
さらに国交省は、技能者本人が
「賃金がきちんと支払われていない」
と思った場合、公的窓口に通報できる制度を
2027年度に運用開始予定としています。
また、「技能者を大切にする企業」として
自主宣言する制度も導入され、
公共工事の経審(経営事項審査)で
加点対象となる予定です。
標準労務費の導入は、
「現場のコストが上がる」
といった話だけではありません。
業界として職人を守り、
未来の担い手を確保するための一歩です。
請負契約のあり方が変わる中で、
私たち技術者には
「新しいルールに対応する力」と
「コストの透明化」が求められます。
時代の流れを見据え、
変化を前向きに捉えていきたいものです。
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【編集後記】
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2026年1月1日より下請法が改正され
「中小受託取引適正化法」となります。
これに対応した動画教材を現在作成しています。
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社長ブログ