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がんばれ建設
~建設業専門の業績アップの秘策~
ハタ コンサルタント株式会社 降 籏 達 生
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■2025年11月14日
NO2463
◆現場で地下水や土壌から基準値を超えるPFASが検出されたら本当に危険なのか
建設業界では、
安全基準、環境基準、騒音・振動基準、
さらには化学物質の取扱いなど、
さまざまな「基準値」が存在します。
しかしその基準値、実は
“絶対”ではないとしたら、驚かれるでしょうか。
農業・食品産業技術総合研究機構の
永井孝志氏による新刊
『世界は基準値でできている』では、
基準値の裏にある「仮定」や
「社会的な調整」の重要性が語られています。
これは私たち建設技術者にとっても
無関係ではありません。
◇基準値は「リスクをゼロにする」ものではない
たとえば、現場で扱う化学物質や騒音レベルの
「許容範囲」は、科学的な数値に見えて、
実は「多少のリスクを許容した上で設定された」
ものであるといいます。
これを「レギュラトリーサイエンス」と呼び、
科学と行政・社会の間を“推定と仮定”で
埋めながら設定されているのです。
つまり、基準値は
「完璧な安全」を保証するものではなく、
「現実的な管理が可能なライン」を
引いたに過ぎないということです。
私たちが
「基準内だから大丈夫」と思い込みすぎると、
逆にリスクに気づけない可能性もあるのです。
◆PFAS(有機フッ素化合物)の例から学ぶ「慎重な視点」
最近、話題になっているPFAS(ピーファス)は、
水や土壌に残留しやすく、有害性が懸念されています。
ある建設現場で、
地下水や土壌からPFASが検出された場合、
基準値の「何倍出たか」という数字だけが
独り歩きするケースがあります。
しかし、それが
「本当に健康に影響を与えるのか」までは、
評価しきれないこともあるのです。
永井氏は
「かつて騒がれたダイオキシン問題と似ている」
とも述べています。
過剰反応や誤解が
現場対応を難しくすることもあるため、
基準値の意味や背景を読み解く力が求められます。
◆若手技術者こそ「基準の成り立ち」に目を向けよう
新しい施工法や建設資材を導入しようとすると、
「基準にないから」と拒まれることもあります。
しかし、永井氏はこう語っています。
「昔は理想的な基準値を追求したかったが、
いまは60点でいい。まずは作って、運用し、
改善していけばいい」
これは、まさに若手技術者の
「提案する力」に通じる考え方ではないでしょうか。
「今のルールに従う」だけでなく、
「なぜそのルールがあるのか?」
「現場の実態と合っているのか?」
と疑問を持つことは、
将来の改善提案にもつながります。
◆実務に役立つ“基準値の見方”を持とう
最後に、建設業界で働く私たちが
基準値を扱う際に意識したい視点を
3つにまとめます。
【1】「基準値の何倍か」よりも「リスクの本質」を見る
→ 数字だけで判断せず、そのリスクの実態や発生条件を確認しましょう。
【2】基準は「科学+社会の合意」で成り立っている
→ 科学的根拠だけでなく、政治・経済・慣習なども加味されて決まっています。
【3】基準は「絶対ではなく運用可能なライン」
→ 時代や技術の進化に応じて見直すことも前提です。
◆まとめ
「基準に従うこと」は大切ですが、
「なぜその基準があるのか」を考える力も、
これからの建設技術者には必要です。
とくに若手の皆さんは、
基準値を“疑う”のではなく、
“理解しようとする姿勢”を持ってください。
そうすれば、見える世界が変わってくるはずです。
『世界は基準値でできている』は、
そんな視点を学ぶのにぴったりの一冊です。
現場の安全管理、環境対策、品質管理に
携わる方には特におすすめします。
※内容は講談社ブルーバックス
『世界は基準値でできている』、および
東洋経済オンラインのインタビュー記事
(2025年10月26日)を参考に再構成しています。
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【編集後記】
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多くの方に活用していただいています。
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