社長ブログ

【がんばれ建設】NO 1335【建設技術】「本社は確実に現場をフォローせよ」

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がんばれ建設
~建設業専門の業績アップの秘策~
作者;ハタ コンサルタント株式会社 降 籏 達 生
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■2019年6月3日

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今日の一言
「メールだけではダメだ」
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 2016年に新名神高速道路の建設現場で作業員10人が死傷した
橋桁落下事故が起きました。
その裁判にて、施工会社の本社工事計画部門が送った安全管理
に関するメールの書き方に問題があり、当時の現場所長に指示
が伝わっていなかったことが分かりました。
そのため、業務上過失致死傷罪に問われた元所長に有罪判決を
言い渡した神戸地裁は、こうした点を考慮して刑を減じました。
本社からの業務指示メールのわかりやすさの重要性を改めて
感じます。

事故では、死者2人に加え、片腕を失うなどの重傷を負った者が
多くいました。
被害の大きさからすると、過失を犯した元所長は「普通なら
実刑になる」(法曹関係者)とみられていました。
元所長を起訴した検察も、裁判で禁固3年6カ月を求刑しました。

しかし、裁判所は19年4月の判決で、元所長が本社計画部門から
受け取ったメールの件名や本文から、指示を明確に読み取ること
はできず、添付図面を確認しなければ内容が分からなかったと
指摘しました。

その上で、「計画部門の指示の在り方に相当の問題があった」
としました。
そのうえで、「あくまで現場における責任者にとどまる被告人
(元所長)個人のみに、事故の全責任を帰することには躊躇
(ちゅうちょ)を覚える」などと述べ、元所長の刑を禁固3年、
執行猶予5年としました。

 事故があったのは、神戸市北区の有馬川と国道176号をまたぐ
有馬川橋の上り線橋桁の架設工事です。
門形クレーンによる橋桁の吊り下げ作業中に起こりました。

 事故前日に、クレーンの北側支柱の地盤に最大高低差20mmの
不等沈下が発生。
当日には沈下が最大約40mmまで進行してクレーンが傾きました。
しかし、そのまま作業を続けたために、桁受けライナー材
(仮支承)の上に載っていた橋桁が、クレーンの受け梁上に
滑り落ちたのです。

 裁判所は、クレーンの傾きによって橋桁が滑落した要因として
元所長が摩擦係数不明の塩化ビニルシートを養生材として
橋桁の下に敷き、摩擦力を低下させたことを挙げています。
 施工会社の計画部門は、橋桁が滑落しないよう、橋桁と
桁受けライナー材との設置面に摩擦係数が不明の養生材の使用
を禁じることを伝えるメールを、元所長ら複数の現場責任者に
送っていました。

 裁判所は、このメールに着目しました。
元所長がメールによる指示に気付かずに養生材を使用した落ち度
は否定できないとしながらも、複数の現場責任者が同じメール
を受け取っていたにもかかわらず、誰も養生材の使用に疑問を
持たなかった点を指摘。
養生材の使用はむしろ計画部門の指示の在り方に問題があった
と判断し、「養生材の使用に関しては被告人を強く責めること
はできず、それを工事継続に対する非難を減じる一事情と評価
することもできる」とした。

 そのうえで、「被害結果や過失の大きさに照らすと、被告人
を実刑に処することを真剣に考慮に入れて検討すべきではある
が、その過失の内容をつぶさに検討すると、実刑以外の選択肢
がないとまではいえず、刑の執行を猶予することも視野に入る」
などと結論付けました。

多くの犠牲があった労災事故では、現場責任者の責任は大きい
です。
一方、多忙な現場責任者をフォローする役目の本社管理部門の
責任もまた大きい。
必要な情報を提供するときはメールだけでなく電話や、現場に
赴くなど確実に現場に伝える努力が一層必要ということでしょう。

これからの現場の本社のあり方を考えるよいきっかけとなった
ことがらです。

5月31日日経コンストラクション 電子版を一部参考に
しました。