社長ブログ

現場の先を読む洞察力を身につける方法【がんばれ建設】NO 1391【建設技術】

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がんばれ建設
~建設業専門の業績アップの秘策~
作者;ハタ コンサルタント株式会社 降 籏 達 生
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■2019年9月9日

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今日の一言
「洞察力とは気づく力」
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鹿島神流第十八代宗家である剣術の達人であり、最後の剣豪とも
言われている、國井善弥(くにいぜんや)という人がいます。
相手の望む条件での他流試合を受けながらも、生涯不敗であった
と言われています。
現代の宮本武蔵ということで、“今武蔵”“昭和の武蔵”とも
呼ばれています。

彼は、戦後、GHQから提案された試合(銃剣を持ったアメリカ
兵との一騎打ち)に一瞬で勝利して、当時禁止されていた剣道・
柔道・弓道などの日本の武道を復活させた立役者でもあります。
この國井善弥の師匠が、新陰流免許皆伝の佐々木正之進。

若き日の國井は、この師匠に練習をつけてもらうため、住み込み
で弟子入りしました。
しかし内弟子としての最初の数ヶ月は、ひたすら師匠の雑用を
やらされたそうです。

あれを持ってこい、これ持ってこい、あれやれこれやれと言われ
続けるばかりで、剣術の修行は一切つけてもらえない。
そうして3か月ほど過ぎ、このままでは単に雑用係でしかない、
と思い始めます。

剣術の稽古をしてほしくて弟子入りしたのに、朝から晩まで師匠
の身の回りのお世話で1日が終わってしまうのですから仕方のないこと。
しかも、その師匠の言い付け方にも不満がありました。
「それ」とか「あれ」といった言葉で、曖昧な指示しか出して
くれなかったのだとか。
これでは具体的に何を求められているのかが、わからない。

半年くらい経った時点で、こんなことをやっていても意味がない
このままでは自分の人生の貴重な時間を無駄にしてしまう、
と思い至り、夜中にこっそり逃げることにしました。
しかし、師匠に見抜かれます。
そして「やはりそうか。何をしようとしているんだ」と言われます。

國井としては逃げようとしていたとは言えず、口ごもっていたら
道場に連れて行かれます。
國井は、もはや何をされても仕方ないと覚悟しました。
すると師匠が白線を1本、すーっと引いた。
そして「この上に立て」と促され、木刀を渡される。
さらに師匠は、自分で自分に目隠しをしたんです。
そして白線の上に立って、木刀を手にして構え、こう言いました。

「思い切って打ってこい。自分は攻撃をしない」

いくら師匠とはいえ、目隠しをしている人を相手にする以上、
どう考えてもこちら有利、思い切り打ったら、師匠に怪我をさせ
てしまう。
逡巡する國井の気持ちを見抜いたのか、さらに言います。

「怪我をさせてしまうと思っているのかもしれないが大丈夫だ。
とにかく全力で打ってこい」と。
もはやこれはやるしかない。
國井は目をぎゅっと瞑り、エイヤ!と声を上げて打ちに行きます。
しかし、打ったはずの瞬間に目を開けたら、目の前には誰もいない。

ハッと気づくと、相対していたはずの師匠が國井の真後ろにいま
した。
目隠しをしていた師匠が、いつの間にか後ろにいて、そればかり
か、國井の後頭部で木刀を寸止めしている。
このとき師匠はこう言ったそうです。

「雑用をさせられてばかりで、お前は何も教えてもらっていない
と思っていたのかもしれないが、私が教えていたのはこれだ」と。

でも、またまた國井には、師匠が何を言っているのかわから
なかった…。
さて、師匠が伝えたかったことは何でしょうか。

師匠は、“わかりにくい言葉で”“無駄に”雑用を申し付けて
いたわけではなかった、「お前に足りないのは洞察力だ」という
ことを伝えたかったのだ、と言われています。
つまり、「『心眼』の獲得のためだった」と。

剣術というのは洞察力が大事です。
相手が右へ動こうとしているのか、それとも左か、打ち込みたい
と考えているのか、何かを仕掛けようとしているのか…。
そういったことを瞬時に察知し、相手の隙を突かないと、
やられてしまう。
使う木刀が“真剣”であれば、斬られることはすなわち命を奪わ
れること。
そう考えると、これまで「ただの雑用だと思っていたこと」に、
ちゃんとした意味があることがわかってきます。

師匠が朝起きて縁側に座ったとき、何を求めているのか?
「あれを持て」と言われたときの「あれ」とは何か?
新聞だろうか?と考えるわけです。

そして新聞を読むのであればメガネがいるだろう、お茶でも
飲みながら読みたいだろう、と想像力、洞察力を働かせる。
國井が何ヶ月も「雑用だと思っていたこと」は、実は、洞察力を
磨くための訓練だったのです。

(『才能の正体』坪田信貴著(幻冬舎)から一部引用しました)

工事現場においても洞察力は重要です。
現場のちょっとした変化を見て、先取りして手を打つことが
欠かせません。

地盤が固そうならオーガーを用意しておく
雲行きが怪しいならシートを用意しておく
景気判断をして、鉄骨や高力ボルトが品切れしそうなら、早めに
予約しておく

現場では一見雑用と思うこともやらないといけません。
「あれ」とか「それ」などと指示されることも多いことでしょう。
しかしそれに対応すると、洞察力を身につけることができるのです。

洞察力や想像力のある人は、「カンが働く人」「先の読める人」
「察しが良い人」「センスのいい人」「ひらめきのある人」。
反対に、洞察力や想像力のない人は、「カンの鈍い人」
「先の読めない人」「察しの悪い人」「人の気持ちの分からない
人」「空気の読めない人」「場の雰囲気が分からない人」。

とりわけ工事現場は自然相手、そして多くの人を相手にする仕事
なので、想定外のことがおきがちです。
想定外を想定内にすることができる能力こそが洞察力です。
洞察力を高める学習が必要不可欠と言えます。

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【編集後記】
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関東地方で大きな被害がでたようです。
足場が崩れた現場も多数ある様子。
くれぐれもケガなされるよう復旧に当られますこと、祈っています。