杭の支持力不足を招いた原因とは【がんばれ建設1827】
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がんばれ建設
~建設業専門の業績アップの秘策~
ハタ コンサルタント株式会社 降 籏 達 生
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■2021年8月26日
NO1827
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今日の一言
「手順の確認が必須」
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現場において品質を確保することはいうまでもなく重要なことです。
品質低下が原因で思わぬ大問題になることもあります。
今回は昨今発生した品質問題を2つ取り上げます。
杭端部にスライムがたまり支持力低下
架設した駅舎鉄骨の一部に54mm沈下していることが発覚しました。
架設直後は設計値通りの高さでしたが、約3カ月後の定期計測時には
低くなっていたようです。
原因を調査した結果、施工済みの場所打ちコンクリート杭30本全てに
先端不良が見つかりました。
掘削孔の根底部にたまったスライムが適切に除去されていませんでした。
そのため、杭の先端部のコンクリートが十分に打設できず、
支持力不足が生じて鉄骨が沈下していたのです。
場所打ちコンクリート杭では掘削箇所を保護するために
ベントナイトを使用します。
その際、土砂ととも沈下し、スライムが底部にたまりやすい工法です。
そこで端部の処理は細心の注意を払う必要があります。
鉄筋かぶりを確保しているつもりが「不足」
橋脚工事において、鉄筋のかぶり不足が見つかりました。
底版の上面にはD32の主鉄筋を2段で、下面にはD29の主鉄筋を1段で
それぞれ配置していました。
「土木構造物設計マニュアル 土工構造物・橋梁編」によると、
主鉄筋の中心からコンクリート表面までの
「芯かぶり」を底版では標準で11cm確保するよう定めています。
一方、同マニュアルではもう1つ、「鉄筋かぶり」の規定があります。
底版の場合、7cmを確保する必要があります。
今回の場合、底版下面の主鉄筋の中心からコンクリート表面までの芯かぶりは11cm。
そこから、主鉄筋の直径29mmの半分に当たる14.5mmと配力筋の直径19mm、
さらに配力筋に掛けたスターラップの直径16mmを引くと、純かぶりは60.5mmとなります。
これは規定値に対して1cmほど足りていません。
今回のミスを招いた一因は、耐震設計の見直しです。
日本道路協会「道路土工 カルバート工指針」では
改訂前は、スターラップを主鉄筋に掛けておけばよかったのですが、
改訂後は、主鉄筋よりも外側の配力筋にフックを掛けて
定着しなければならなくなりました。
その結果、主鉄筋からの芯かぶりが11cmを確保できていても、
最外縁鉄筋であるスターラップからの純かぶりが7cmを確保できない
ケースが出てきたのです。
いずれの事例も、いったん発生してしまうと、原価、工程に影響し、
ひいては信用低下を招きます。
十分に留意したいものです。
日経クロステック記事を一部参考にしました。