クレーマーに遭遇したとき、どうすれば工事残金を勝ち取ることができるのか【がんばれ建設2319】
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がんばれ建設
~建設業専門の業績アップの秘策~
ハタ コンサルタント株式会社 降 籏 達 生
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■2024年10月9日
NO2319
◆クレーマーに遭遇したとき、どうすれば工事残金を勝ち取ることができるのか
カスハラ(カスタマーハラスメント)が
問題となっていますが、
建設業でも同様のことが起こります。
リフォーム工事でクレーマーとの裁判になり、
残金を超える921万円勝ち取った事例を紹介します。
住宅会社A社が総工事費1500万円の
大規模なリフォーム工事を受注したものの、
施主とその妻から度々工事を妨害されたり
過度のクレームを受けました。
そのうえ、「工事が遅延した」などの理由で
800万円以上に上る最終金を踏み倒された
事件についての民事訴訟です。
◆クレーマーの状況
・工事請負契約書を締結した後、
施主は「玄関は使わないでほしい」と
現場監督に通告してきました。
施主の妻は、近くを職人らが通るたびに、
明らかに顔をしかめました。
そのため外壁を張り替える際、
ALC板を1枚分だけ張らずに出入り口としました。
しかし、外壁工事が終わると、
再び出入り口はなくなりました。
その後は、地表1.2メートルのところにある
幅78センチ、高さ83センチの洗面所の窓から
出入りすることを強いられました。
・フローリング工事にて施工中に
接着剤が少しはみ出しました。
ヘラなどを使って取り除きましたが、
施主の妻がそれを許さず、
全面張り替えを要求しました。
A社社長が土下座までして
クレームを撤回してもらおうとしたが、
妻は頑として聞き入れませんでした。
・土日を返上して遅れを取り戻そうとしましたが
「休日に工事をするのは非常識だ」などと
言われ、妻に追い返されました。
・本来の工期から2カ月遅延し、
4カ月以上かかって工事を終えました。
それを理由に、施主は約800万円の残金を
支払わないと一方的に通告してきました。
A社社長が直接請求に出向いたところ、
施主と妻は社長が家に入ることを拒否し
「あんたの会社みたいなのは倒産してもいいんだ」
と言い放ちました。
◆裁判結果
・工期の遅れを施主の妨害などによるものだと認め、
最終金全額を支払うよう、仮執行付きで施主に命じました。
・施主が要求した過度の
「ダメ工事(完成時に施主が求める補修工事)」は、
契約外の工事であると認め、A社は最終金よりも
多い金額を勝ち取ることができました。
これは「契約外工事報酬請求権」を認めたものです。
・契約前のプランニング作業に関する請求は
認められませんでした。
契約に至るまでに4カ月を要し、プランニングに
かかった時間は延べ82日間に及んでいます。
しかし判決では、契約に至るまでの労力は
「(原告が)契約時には、完成と同時に代金が
もらえるものと考えていたから請求するつもりは
なかった」部分であるとしました。
設計施工一貫請負の形式で契約書を締結した場合
プランニングにどんなに苦労したとしても、
その労力は契約書を結ぶための努力と
見なされるという解釈です。
裁判はA社の全面勝訴に終わりましたが、
A社社長は体調を崩し、亡くなりました。
◆対策
裁判では、数多くのクレーム行為が認定されました。
いかにクレームが過剰なものだったかを
立証できれば、「契約外工事報酬請求権」が
認められる可能性もあります。
今後カスハラに遭遇したら、詳細に記録したり、
録音、写真撮影したりなど、
事実を立証することが必要です。
「交渉相手を見極める目」と
「契約交渉の技術」が
今後ますます必要となってきています。
日経ホームビルダー2004年10月号
「住宅事件簿」(執筆:池谷和浩)を
一部参考にしました。
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【編集後記】
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建設会社で働く皆さんに
「建設業で本当にあった心温まる物語」を書いていただき
書籍にしたり動画にしたりしています。
本日その文章を読んでいて涙があるれる思いでした。
近く書籍を発刊しますのでお楽しみに。
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