外国人材との共生で現場に新たな風を――井木組が描く未来の建設業
「まずは話を聞いてみよう」から始まった、外国人材との出会い
鳥取県琴浦町に本社を構える株式会社井木組。
地域密着で土木・建築工事を手がける同社が、ベトナム人材の受け入れを決断した背景には、
社内外のさまざまな模索がありました。
『最初は県内の日本語学校などにも足を運んで、人材確保の道を探っていました。
でも、建設業に特化しているわけではなく、“この人どうですか?”という紹介の仕方だったんです。
そんな時にハタコンサルタントさんから、建設業に合った人材をご紹介いただきました。
ドゥックさんとフォックさん、この2人との出会いが、すべての始まりでした。』
コロナ禍での採用ということもあり、面接や交流はすべてオンライン。
直接会うことができないまま入社が決まったことに、不安がなかったわけではないと言います。

「どんな子たちなのか知りたくて」来日前のメール日記交換が絆を深めた
『来日前は直接会えず、不安もありましたので、毎日日記を書いてもらうという取り組みを始めました。
日本語で日記を書いてもらい、それに私が返信する形です。
漢字も使い ながら一生懸命書いてくれて、それがすごく嬉しかったです。』
実際には、ドゥックさん、フォックさんには2022年2月から6月、
日本へ入国する直前までの約5か月間、毎日日記を日本語で書いてもらい、
1週間分をまとめて翌週の月曜日に私宛にメールで送ってもらうという形をとりました。
その日記には、誤字や書き方の間違い、感想などを添えて、私から2人に返信をしていました。
来日当初の日本語レベルはN4程度。
入社後は、日本語学習と鳥取の観光を組み合わせたスケジュールで受け入れをスタート。
午前は勉強、午後は名所巡りやドライブ。段階的に日本と職場に慣れていく仕組みを整えました。
驚異のスピードで成長。2年半後には現場代理人に
『2人とも本当に勉強熱心で、用意していた日本語教材は3か月で終わってしまって。
“もう現場に行きたい”と本人たちからも強い希望が出て。
夏のインターンシップでは、大学生と一緒に活動もして、刺激になったようです。』
その後、半年〜1年単位で現場経験を積み、
ついには2年半でドゥックさんが「現場代理人」として港湾工事(約8000万円規模)を担当。
国家資格である「2級土木施工管理技士」にも合格しました。
『現場のベテランや所長さんがしっかりサポートしてくれて。
“自分の現場に来てもいいよ”と声をかけてくださった方もいて。
みんなで彼らを支えてくれたことが、成長につながったと思います。』
フォックさんも同じく、2級土木施工管理技士を取得。
さらに日本語能力試験N2にも合格するなど、着実に成長を重ねています。

日本語も、資格も、そして人間性も。「こんなにすごいとは」
『正直、日本人でも合格が難しい国家資格を、2人とも取ったんです。
努力はもちろん、周囲への気遣いもできて、社内でも“日本人以上に日本人らしい”と評判です。』
仕事の合間には日本語の勉強、休日には散歩で看板を読み取って語彙を増やすなど、自ら学ぶ姿勢が印象的だったとのこと。
また、ベトナム人コミュニティとの交流やサッカー大会への参加など、生活も充実している様子です。
『フォックさんは人気者で、彼女もできたみたいで(笑)。
でも、仕事や勉強には真剣。自分たちでWi-Fi契約の手続きまで調べて動いたり、毎月家族に送金したり。
本当に感心することばかりです。』

文化の違いを超えて、会社の宝となった存在に
『最初は“うまく馴染めるかな”“帰りたいって言い出したらどうしよう”という不安もありました。
でも、今では心配もなく、むしろ彼らに助けられている部分の方が大きいかもしれません。』
育てる覚悟、受け入れる体制、そして何より“人として向き合うこと”が、成功のカギだったと振り返ります。
『彼らが頑張る姿を見て、日本人社員にも刺激になってると思います。
将来的には一級の資格にも挑戦したいと話していて、今後の成長が本当に楽しみです。』