2018-10-29 建設業の心温まる物語/日刊建設工業新聞掲載記事を引用

今から約20年前にある施設の改築工事を担当することになりました。当時の私は30歳を超えたころで作業所長として大型物件を施工した経験が少なく、図面を見ているうちに「自分にこの工事を担当できるだろうか」と不安でした。
その施設は使用している建物を半分取り壊し、その敷地へ建物を建てて、お客様に引っ越しをしてもらい、残りの半分を取り壊して、またそこに建物を建てる2期工事で約1年半に及ぶ工事でした。工事価格は約7億円で、私は金額の大きさにも動揺していました。
若い頃に当時の上司が、「規模や金額の大きさでビビッていても仕方がない。やることは一緒だぞ。土を掘って基礎をして建物を建てていき、最終的にお客さんが喜んでくれれば、それがいちばん!」と言ってくれていたことを思い出し、施主・設計監理者との打合せやコミュニケーションを取りながら、コツコツと建物を建てていきました。
ようやく建物が無事完成し、引き渡しできた時、お客様から「白川さんも不安だったでしょうけど、わたしたちもこんなに若い監督さんで心配でした。でも一生懸命に建物を造っている姿を見ているうちに安心できました」と声を掛けてくださいました。
そんな言葉を掛けていただいた時は、ほっとした気持ちと「良かったな」という安堵感でいっぱいでした。
今でもちょっとした工事でも必ず私に直接連絡をいただいています。「建物は建ててからが本当の付き合いが始まる」の言葉通りです。