2018-11-26 建設業の心温まる物語/日刊建設工業新聞掲載記事を引用

私が初めて下水道工事の開削工事を担当した時のことです。丁張りの高さを間違え、床付高を管底高で仕上げて、20㌢も高くしてしまいました。管布設を行う時になって、高さの間違いに気付きました。あと20㌢掘削しないと管を据え付けられません。
床付作業と管布設作業とは別の会社で行っていたため、管布設作業員は仕事ができなくなりました。床付作業を行った会社の作業員は、同じ工事の別の場所で施工を行っていたので現場に所属してはいましたが、あいにくその日は土曜日でその作業員は休日を取っており、現場にいませんでした。管布設は土・日で行う予定でクレーンも手配していたので、たいへんなことになってしまいました。
作業員は現場近くの宿舎に住んでいたので、私はその宿舎に行き、床付作業員を見つけ「何とかしてください」と頭を下げました。親方は一瞬驚いた顔をしましたが、その後嫌な顔ひとつせずに「仕方ないな。みんな現場にいくぞ」と言ってくれました。そして作業員を現場に連れてきて、床の掘り下げを人力で行ってくれました。重機がないので、土砂はその場にいたクレーンでバケツを使い搬出しました。
そのおかげで遅れながらも、管布設を始められました。休日で休みを取っていたにもかかわらず、嫌な顔ひとつせずに快く仕事をしてくれて涙が出る思いでした。断られて当然のことなのに、困っている私を助けてくれたことに感謝です。
その人達とはその後、たびたび一緒にお酒を飲みかわしています。「あの時はたいへんだったな」と笑顔でいいながら。