2018-12-26 建設業の心温まる物語/日刊建設工業新聞掲載記事を引用

私が大学を卒業し、ゼネコンに就職したのは32年前のことです。新入社員の時から、ダムやシールド等の規模の大きな現場で現場管理の「イロハ」を学びましたが、3年目になり水力発電所の改修工事を担当することになりました。
はじめて工事主任という肩書をいただいたこともあり、現場宿舎に泊まり込んで夢中になって工事を進めていました。
その水力発電所は昭和初期に造られたもので、戦前から戦争まで日本のエネルギーを支えてきたものの1つです。改修工事を進めながら、古くなったタービンやまわりのコンクリートを壊していくと、中から金づちが出てきました。約75年前に職人が手にした金づちが、この発電所が役割を全うしてきたことへの畏敬の念を感じさせてくれました。また自分が造ろうとしている新しい発電所が未来の人々の役に立てると考えると、仕事へのやり甲斐も一層増していったと記憶しています。
それから約30年が経ち、この水力発電所の近くを車で通りました。一緒に乗っていた家族に「昔、お父さんはあの発電所を造ったんだよ」と自慢しました。
自分の仕事が形で残るというのは本当にいいものだと感じています。