2018-6-25 建設業の心温まる物語/日刊建設工業新聞掲載記事を引用

施工管理の仕事に就いて3年目、3つ目に担当した学校の新築工事でのことです。工事の敷地のすぐ隣には、既存の学校があり学生さんがいました。
入社してすぐは、見るもの接すること全てが新鮮で、新たに覚えられることも楽しく、夢中で現場に通っていました。しかし、3年目にもなると、変に慣れてきてしまっていました。その上、工事が工期もお金もなく突貫にも近い工事であり、毎日の業務に追われ、怒鳴られ怒られる日が続き、嫌気がさしていたところでした。
そんなある日、現場の片隅に立っていたところ、「頑張ってくださーい!!」と上から声が聞こえました。振り返ると、女学生さんが2人、隣の学校の階段の踊り場から手を振っていました。一瞬「誰に言ったのだろう」と思いました。しかし、周りを見渡しても他には人はいません。「私に言ってくれたんだ」。おそるおそるその2人に向かって会釈すると、笑顔で会釈を返してくれました。
その時、「あっ、今、私が造っている建物は彼女たちが使うのだ!」と改めて気付きました。それまでは、エンドユーザーとなるお客様との接点はありませんでした。女学生2人のおかげで、「私は人が使う建物を造る仕事をしているんだ」と思い、「あなたたちのために頑張るわ!」と奮起することができました。
無事完成した建物はきっと彼女たちが使い、今もその後輩たちが使ってくれていることと思います。それを私は誇りに思います。