建設業で本当にあった心温まる物語

株式会社ガイアート(福井県)・齊藤 憲太郎/~亡き父が残した言葉~

2017-8-28 建設業の心温まる物語/日刊建設工業新聞掲載記事を引用

 私は大学進学時、たいしてやりたいこともなく、父が建設業を営んでいたため、なんとなく近所の大学の建設工学科にて学び、なんとなく地元のゼネコンに入社して現場監督になりました。

 入社して2年が経ち、福井県発注の元請土木工事を1人で管理することになりました。福井市鮎川町の国見小中学校前の海岸護岸整備工事でした。海の水を締め切って階段ブロックを積み、遊歩道を設置する工事でした。事務所での書類の作成は慣れてきていましたが、現場で測量したり、丁張をかける方法など分からないことが多くありました。会社の先輩に相談しようにも皆さん忙しく、誰にも聞くことができず困っていました。

 そこで、普段あまり会話のなかった父に、思い切って電話をしてみました。すると福井市で仕事をしていた父はその場で「今から行くぞ」と、すぐに車で現場にかけつけてくれました。父はそれまで見たことのないようないきいきとした表情で、私に測量方法や「・・・に気をつけろ」などと現場管理のポイントなど教えてくれました。その後もまるで自分の会社の現場のように週に一度様子を見にきてくれました。

 その後、父は肺ガンに倒れました。見舞いに行くとベッドに横になりながら「お前はまだまだだ」。しばらくして父は亡くなりました。

 今では社会人になり20年経ちました。多くの経験を積み、たくさんの若手技術者を育ててきました。当時は認めてくれなかった父のおかげで、今があります。父に、少しは認めてもらえるようになったかなと感じています。