宮前建設株式会社(宮崎県)・山口 和弘/~最後に素敵な現場をありがとう~
2017-10-30 建設業の心温まる物語/日刊建設工業新聞掲載記事を引用
宮崎県日南市油津港外港地区防波堤の上部工工事で出会った職人Aさんのお話しです。Aさんの年齢は、私のおじいさんくらいで70歳くらいでした。生コンクリート打設から天端仕上げまでを担当されていました。Aさんの年齢が高いため、私は現場代理人兼監理技術者という立場上、けがなどされないよう普段から気を配っていました。
ある日のこと、作業開始前にAさんが体調不良を訴え、倒れてしまったのです。私はそのまま病院へ連れていきました。原因は疲れからくる体調不良でした。
Aさんは1週間後に現場へ帰って来られました。その日は、最終の生コンクリート打設でした。「おかげさまで無事最終コンクリートを打ち終えました」とAさんに現場に戻ってきていただいたお礼を伝えると、次のように話されました。
「長年建設業で働いてきましたが、最後の現場で、こんな素敵な仕事を手伝わせてもらってありがとうございました。この現場で引退します。たいへんお世話になりました」
体調不良で倒れた時に引退を決めたとのことでした。
「ここの現場は遠くからでも見えます。それに景色がとてもいい。最後に多くの人が見る場所で、いつまでも残るものにかかわることができて本当にうれしかった」と言って引退されました。
Aさんの感謝の言葉はずっと忘れられません。永い間、たくさんのものを作っていただき、ありがとうございました。